読書記録(冬)

シゲの書いた作品のコミカライズの1巻が12/26に発売。それに合わせて同日発売の月刊ASUKAにインタビューを掲載。
加藤シゲアキ『ピンクとグレー』 | KADOKAWA


さて、冬の読書記録メモの前に今年の読書をふりかえると、小川洋子さんにハマりました。現実の中にファンタジー要素が違和感なくなじんでいて、温かい文章の中にひんやりとした不幸(死)の匂いが感じられる作風。一番好きなのが下に挙げた「象を抱いて猫と泳ぐ」です。他には、有川浩さんの作品にはどれも前向きに生きるパワーがあるのに感心しました。女性作家中心に手を出したので、来年は男性作家の幅をもう少し広げたい。


宮尾本 平家物語〈4〉玄武之巻
大学1年の蔵原はふとしたことから同じ大学の4年生・清瀬のいる寮に住むことに。寮をとりまとめる清瀬は、寮生が10人になったこと受け、突然「10人で箱根駅伝を目指そう」と宣言した…。
面白かったです。素人含む10名が春から練習を始めて正月の箱根駅伝を目指すというそれ無理だろーという設定を、トレーニング過程を丁寧に描写することでありえるかもと思わせる。登場人物もそれぞれストーリーあってキャラ立ってる。「走るとはどういうことか」と突き詰めていく様はこちらも思わずその問いについて考えてしまう。スポーツ物らしく読後爽やか。


風が強く吹いている
大河ドラマが平安モノなので読んでみました。大河ドラマ義経」の原作。でもこの作品の主役は清盛。いろんな人物・エピソードを丁寧に紹介している。女性作家だからなのか、風雲急をつげる戦国絵巻であるのにどこか優雅さが漂う。骨太な戦模様を期待してるとやや肩すかし。もう少し自分の年齢を重ねてからじっくり読む方が楽しめそうだと思った。


ユリゴコロ
面白かった。ジャンルとしてはミステリーになるのかな。「日記」に書かれていることは現実なのか??誰が書いた?というところから始まってぐいぐいと引きこまれました。凄惨な非日常とどこにでもある日常の対比が鮮やか。平凡な家族の秘密が明らかになって終わりかと思いきや、そこからもう一つ大きな事件が。「善人」の話ではないので、こんなにキレイな話にしていいのかと思うけれど、さわやかでもあり物悲しくもあるラストが良かった。


猫を抱いて象と泳ぐ
チェスを愛する少年の物語。チェスがわからなくても、その競技がいかに素晴らしいものかが伝わる。チェスに打ち込むしかない人生は客観的に見ると寂しさがあるのに、作中の主人公は幸せでしかない。純粋であることのなんと美しいことか。少年に対する作者の描写が優しい。けどもどこか哀しい。作品全体の雰囲気がとにかく好きな作品。